「はやぶさ2」

2026-8-15

 まだご記憶にあろうかと思いますが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は「本年7月5日に日本の探査機「はやぶさ2」が地球から約1億km先で、小惑星「トリフネ」の間近を秒速約5.2kmの高速で通過しながら観測するフライバイ探査に成功した」と7月6日に発表しました。
(※)地球一周は約4万kmですから、1億kmは2,500倍の遠さになります。また、光の速度は秒速30万km(地球7.5周)ですので、光の速度でも333秒(5.5分)掛かる距離です。

このNews凄くないですか?
◆ 何が凄いかって?書き出したら書き切れない程あると思いますが、筆者なりに主要な点を書き出して見たいと思います。
1.「はやぶさ2」(以下、本船と称す)は平成26年(2014年)に打ち上げられた事。今から12年も前ですよ。
2.令和2年(2020年)に小惑星「リュウグウ」の試料を地球に届けた(これはMediaで大々的に報道されたので、皆さんのご記憶にあろうかと)。
*これにより太陽系の起源や生命の材料に関する重要な情報を持つ「リュウグウ」から、世界初のSample Returnを達成した。Sampleは目標0.1gの所、実際には5.4gも採取した。
3.「トリフネ」の表面から400~600mの距離まで近づいた事。
*ここまで接近する理由は、本船には強力な望遠カメラが無いからだそうです。今回は光学カメラや赤外線カメラで形状や表面の状態、温度や物質の特徴を調べるには鮮明な画像が必要だった様です。
4.フライバイ探査
 地球から遠く離れた機体を狙い通りに飛ばす必要があるが、比喩としてJAXAの職員は以下の様に表現している。
1)北海道にある1円玉を沖縄からレールガン(電磁加速砲)で射抜くぐらい。
2)疾走する馬上から的を射抜く流鏑馬の様だった。
(実際の探査終了後の後者のコメントの方が、早さには雲泥の差があると思いますが、実態にちかいのではないかと筆者は推測します)
 いずれにしても、これだけ離れている本船に対して、この様な早い速度で、しかもいつから行ったのか分かりませんが、緻密な計算を行って本船をControlして運航し、成功させた。
5.プラネタリーディフェンス
1)地球に衝突する危険がある小惑星に探査機が急行し、状態を把握する緊急調査の基礎になる。
2)高精度な飛行制御技術は探査機を危険な小惑星に衝突させて針路を変える場合に役立つ。(実際に隕石が地球に落下して被害が発生しているので、こういう地球を守る手段は絶対に必要だと思う)
*今回、本船がMissionを達成した事により、実績が出来た。
6.「リュウグウ」以降のMissionの延長
 本船のMissionが延長されていたとは、筆者は知りませんでした。また、今回の「トリフネ」のMission後も飛行を続け、最終目的地である小惑星「1998KY26」に令和13年(2031年)に到達する予定との事。もし、そうなれば、打ち上げから実に17年の長きに渡る探査飛行となります。
7.Engineの故障
 本船の推進力は4個のイオンエンジン(Ion Engine)で得ていますが、その設計寿命は2020年の「リュウグウ」の探査までとなっており、既に6年も超えている。しかも4個の内3個は劣化が進行して使用しておらず、残りの1個で運用しているとの事。それでもまだ飛行を継続しているとは凄い事です。しかしながら、この様な状態なので、最終目的地まで行けるかどうかはEngine次第だとの事です。

◆ 「はやぶさ2」で思う事
 日本の宇宙開発技術も捨てたものでは無いという事かと思います。昨年12月にH3 Rocketの打ち上げに失敗し、その時にはこれで日本の宇宙開発は2年遅れるだろうと言われました。しかしながら、今回の「はやぶさ2」の成果は、この様な目立たない(?)所だと思いますが、1つのProjectを地道に継続して科学的にも地球防衛的にも多大な貢献を行ったと思います。
また、先代の「はやぶさ」や「はやぶさ2」もEngineだけでなく、様々なTroubleに遭遇しながらもそのたびに、技術者が知恵を絞って本船に残っているSystemを上手く組み合わせて探査を続行させている事です。これは将に洋上で誰からも助けを受けられない、我々Engineerが何とかPropellerを右に回す事に通じるものかと思います。

 今回の「はやぶさ2」の快挙は、日本人が世界に誇って良い事だと思います。こう言った事を積み重ねて行けば、まだまだ日本の宇宙開発も将来があろうかと思います。またこの様な夢のある出来事は、子供達や若い人達も興味を持つものと思い、若い力が加わって、この分野がさらに発展して行くのだろうと期待してしまいます。
我が海運業界にもこの様な夢のあるProjectは無いものでしょうか?造りたいですね!

以上

(注1)2024年9月にJAXAは今回探査した小惑星を「トリフネ」と命名しましたが、これは、日本神話に登場する神や、神が乗る船の名前である「天鳥船」にちなむという事だそうです。また「天鳥船」は、高速で安定して航行できる船とされており、観測の安全な実施を願う思いも込められているとの事です。
(注2)イオンエンジンは、マイクロ波によってキセノンをプラズマ化し、電気的に加速させ、その反力により推進力を得るエンジンのことです。
(注3)つい先日の8月11日H3 Rocket9号機が「みちびき7号機」を搭載して打ち上げられ、打ち上げは成功しました(下記のH3ロケット 打上状況ご参照)。これで日本版GPSは6台となり(計画は7台)、当面はこの体制で運用されるとの事です。
GPSが7台ある事により「みちびき」だけで位置を計算出来る事となりますが、それより少ない機数だと他国のGNSS(Global Navigation Satellite System)が必要となる様です。