イラン紛争

2026-4-6

 本年2月28日に米国とイスラエルがイランへ攻撃を開始してから1ヶ月以上が経過しました。攻撃の目的は「イランの核兵器所持の粉砕とテロ支援国家としてのイランの政治体制の転換」と言われていますが、   この攻撃は国際法違反と世界各国から非難されています。
 攻撃は開始早々イランの最高指導者ハメネイ師を始めとした幹部を殺害した事により、今年始めのベネズエラのマドゥロ大統領拘束の様に早期に終了するものと思われましたが、4月6日現在、紛争終結の道筋は見えません。

 この自由海論では政治的な話をするつもりはありませんし、その様な思想的な考えを展開する場でも無いと考えていますが、この紛争により我々の仲間が今、現在もペルシャ湾内に閉じ込められ、いつ戦火の巻き添えになるのかも分からない状況に置かれている事を、もっと世の人達に知って貰い、早期救出に声を上げて貰いたい事と併せて何らかの形で記録して置く必要があろうかと思いペンを取りました。
 皆さんご存じの様に中東地域は戦火の絶えない地域です。筆者が入社した1980年からの紛争の歴史を見ただけでも以下の通りです。

1.イラン・イラク紛争(1980/9/22~1988/8/20)
 イラクとイランが戦った戦争で、湾内ではお互いのTankerを攻撃し、Tanker戦争とも言われた。
1)この戦争全期間の海運関係被害
 546隻が被害を受け、333人が死亡し、317人が負傷、内日本関係船は19隻、日本人船員2名が犠牲となった(あるReportより)。
2)邦船社のコンテナ船
 1980/9/26邦船社のコンテナ船がイラクのウムカッスル港にてミサイル1発被弾し、閉じ込められて1年以上出港出来なかった(結果的に全損として保険処理された)。
3)護送船団方式
 戦争当事国とは敵対関係に無い事を示す為、船体の両サイドとOn Deckに日の丸を描き(特に原油タンカー)、可能な限りの船団を組んでホルムズ海峡を通狭した。

2.湾岸戦争(1991/1月)
 1990/8月イラク共和国サダム・フセインが突如クウェート侵攻。これに対し1991/1月に米国ブッシュ大統領(父)が多国籍軍を編成して1/17にイラクを空爆(砂漠の嵐作戦)、100時間程度でイラクの敗北により終結(正式には2/28)
1)資金協力
 米国から日本へ戦費の拠出と共同行動を求められたが、憲法9条から自衛隊の派遣が出来ず、結果として総額130億ドル(1.7兆円)を拠出した。しかしながら人的貢献が無かったとして、米国を中心とした多国籍軍の参加国から「小切手外交」と非難された。
2)91/4月 海上自衛隊の掃海艇をペルシャ湾へ派遣する事を決定
4/26出発 10/28帰着、34個の機雷を処分
 その後、1992/6/15にPKO法(交際平和協力法)が成立し、これにより自衛隊を海外に派遣する事が可能となった。

3.イラク戦争(2003/3/20~2010/8/31)
 ※ 2001/9/11 米国同時多発テロ事件
 2003/3/20 アメリカを中心とした有志連合軍が、イラクによる大量破壊兵器保持における武装解除進展義務違反を理由とする、『イラクの自由作戦』を敢行した。
イラク全土攻略に1ヶ月強という凄まじい速さでの占領であった。
 2003/5/1 戦闘終結宣言
 2003/12月 サダム・フセイン元大統領逮捕 (2006年12月30日処刑)
1)イラク陸上自衛隊を派遣 2003/12月~2009/2月->復興支援が目的
 イラク南部のサマーワを宿営地としたー>比較的治安が安定していた(非戦闘地域との建前)
2)日本のVLCCが被弾(2004/4/24 at Basrah Terminal in Iraq)

4.2019年米国がイラン核合意から離脱し、再制裁を課す中で、ホルムズ海峡周辺で複数の商船やタンカーが攻撃を受ける事件が発生
1)2019/6/13 日本の海運会社が保有するタンカーが攻撃を受ける。

5.2025/6/22 米国がイランの核施設を爆撃

6.2026/2/28 今回の紛争開始

 以上の様に、この地域は常に戦火の絶えない所ですが、日本へのエネルギーの供給元であり、石油に至っては95.9%が中東地域からの輸入に頼っている現状があります。その様な場所に我々船員は行かなければならない宿命を負っています。
 1ケ月以上経過した現在もペルシャ湾内には1,000隻以上の船が滞船しており、その内、日本関係船が45隻で、更にその内5隻に日本人24名が乗船中との事である(4/3, 4/4にMOL関係船2隻が湾外へ出湾したとの報道あり)。
 船主協会によれば、各船では乗組員の健康状態に問題は無く、水、食料も確保されていると言う事ですが、イランとイスラエルでの互いのミサイル攻撃や、イランによる湾岸諸国への石油及びLNG基地やインフラ施設への攻撃によりいつ何時本船に被害が及ぶやもしれない状況に置かれている乗組員の心理的負担は想像を絶するものがあります。

 各国は如何にエネルギーを確保するかに奔走していますが、一方ではペルシャ湾内に多数の船員と船舶が拘束されている事をもっと考えて一刻も早い救出を行うべきかと思います。何故もっと世界の世論が沸き上がらないのか?元船員の1人として歯痒く思っています。一番の解決策はホルムズ海峡が安全に航行出来る様にする事です。その為にも国連、さらに4/3に開催された40ヶ国超の外相会議は有効かと思います。国際社会がこぞって紛争当事国に圧力を掛け、早期の紛争解決、それが不可能なのであれば、少なくともホルムズ海峡の封鎖を解除して安全に船舶が通行出来る様にし、現在拘束されている船舶の出湾だけでも実行して貰いたいと切に願うと共に、日本政府及び関係者も種々検討しているでしょうが、早急なる対応をお願いしたいと強く思います。

以上