自由海論ー海技士(機関)免状の汎用性(その1)

2025-8-25

この協会の会員になる為の条件は海技士(機関)を所持している事が基本となっています。ですから会員の皆さんは海技免状を所持している訳ですが、この海技士(機関)免状は、調べてみると非常に汎用性の高い資格となっている事が分かりました。即ち、海技免状を所持している事により、その他の「国家が認めている免状を取得する」に際し、優遇措置を受ける事が出来るのです。第1弾としてその具体例を2~3点下記しますが、会員諸兄の中に、我々が持っている海技免状で、他の資格を取得する時に優遇措置を受けた経験のある方や下記に示した資格以外にも優遇措置を受ける事が出来る資格がある事をご存知の方がいらっしゃれば、その有用性を会員間で共有したいと思いますので、是非、お知らせ下さい。

また、当方におけるの調査は完璧ではありませんので、もし、当方の記載内容に間違いがあればご指摘下さい。

  • (例1)小型船舶操縦免許(1級)学科試験の免除

当該学科試験には以下の試験項目があります。

1.小型船舶操縦者の心得及び遵守事項(一般): 12問

2,交通の方法:   14問

3.運航(一般):     24問

4.運航(上級I):    8問

5.運航(上級II):   6問

この内、海技士(機関)を所持していれば、上記学科の第5項「運航(上級II)」が免除されます。

更に、会員の中には船員制度近代化に絡み海技士(航海)を所持されている会員も大勢いらっしゃるかと思いますが、その会員の方は上記学科の第2項~第5項までが免除され、第1項「小型船舶操縦者の心得及び遵守事項」(12問)だけを受検すれば良い事になっています。

かく言う筆者も海技士(航海)を所持していましたので、学科試験は、第1項の科目(12問)のみを受け、学科試験合格後に実技試験を受験して、無事「小型船舶操縦免許1級」を取得しました。試験勉強は非常に楽と言いますか、12問だけですので、過去問のみを勉強しただけでした。

(注1)航海当直限定免状でも免除は可能です。

(注2)有効期限が切れている海技免状でも、海技士資格は永久免許ですので、学科試験免除の有効性には影響はありません。

(注3)昭和49年(1974年)5月の船舶職員法改正以前は、甲種船長/一等航海士/二等航海士には、小型船舶免許も含まれていた様ですので、我々の諸先輩達(航海士)は、自動的に小型船舶免状を所持していた事となっていました。しかしながら、この改正で大型船と小型船に免許が区分され、海技士(航海)を所持していても小型船舶は運転不可となりました。

  • (例2)特級ボイラー技士

ボイラーの取扱いを行う際に必要な免許。特級から2級までの3種類の免許があります。区分に関係無く全てのボイラーを取り扱う事が可能となっています。

特級ボイラー技士

受検資格->1級または2級海技士(機関)免許を有するもの

あくまでも受検資格があるだけですので、実際には試験を受ける必要がありますが、少なくとも海技士免状を所有しているだけで、受検資格があると言う事はメリットです。なお、試験に合格しても免許が直ぐに貰える訳では無く、免許を取得するには、下記条件が必要となる様です。

  • 一級ボイラー技士免許をうけた後、5年以上ボイラー(小規模ボイラー及び小型ボイラーを除く。以下同じ。)を取り扱った経験がある者又は当該免許をうけた後、3年以上ボイラー取扱作業主任者としての経験がある者で、特級ボイラー技士免許試験に合格したもの
  • ボイラー及び圧力容器安全規則第101条第1号ロ又はハに掲げる者で、特級ボイラー技士免許試験に合格したもの

(注1)1級ボイラー技士の受検資格->3級海技士(機関)以上の免許を有するもの

(注2)ボイラー取扱作業主任者

ボイラーの取扱い作業の指揮・管理を行うボイラー取扱作業主任者になるには、ボイラーの規模(伝熱面積等)により必要な免許が異なる。

まあ、この資格は、ある意味必然で、我々機関士は、船内でボイラー(今は殆ど姿を消してしまいましたが、Turbine船のボイラーは高温・高圧で高度な知識・技術が必要でした。)を取り扱っているので、もっと免除規定があっても良いのではと思わずにはいられませんが。

  • (例3)教員免状

これは、ある会員の方からの情報で知った事ですが、

3級海技士(航海でも機関でも)以上の免状を有していると教員免状を取得する事が出来る様です。但し以下の条件を満たすことが必要との記載があります。

条件

  • 5年以上の実務経験がある事(乗船履歴では無い)
  • 所属していた会社から技術優秀との書類がある事

取得免状の種類

  • 中学校教諭2種普通免許状(職業)
  • 高等学校教諭1種免許状(商船)

教育職員免許法施行法について(海技士関係) – Coocan

(注)海技免状を所持しているだけで条件付きながら教員免状を取得する事が出来るということには、ビックリです。筆者は、学生時代に水産高校で教員免許取得の為に教育実習を経験したことがあり、教育実習をしないと教員免状は取得不可と頭から思っていましたが、大きな間違いでした。