MEPC臨時会合
(これで良いのだろうか?)
「ビールの泡」(その2)を記載しようと思っていましたが、我々の業界に取って重要なGHG削減対策が「泡」と消えそうな話が出て来ましたので、急遽その話題についての話をしたいと思います。
会員諸兄もご存知の通り、先月10月14日~17日までLondonのIMOにてMEPC臨時会合が開催されました。
そこではこの4月のMEPC83で承認されたGHG削減中期対策(NZF: Net Zero Framework)が採択される予定でしたが、今次会合では採択が見送られ、1年間延期される事となりました。採択には出席国の3分の2以上の賛成が必要だったのですが、今回はその採択にたどり着く前に産油国のSaudi Arabiaが1年の採択延期の動議を提出し、以下の様な結果にてその動議が可決され、前述の通り1年後に再度審議される結果となりました。
・賛成 57-産油国、米国、ロシア、中国、パナマ、リベリア等
・反対 49-欧州、島嶼国等
・棄権 21-日本、韓国、ギリシヤ等
日本は、GHG削減中期対策をEU等と共に主導して来た立場でしたが、会議開催中にこの対策に反対する国が増加し、このままでは採択に掛けられても否決される可能性を考えて、本対策に反対の米国への遠慮(これは筆者の想像)と、共に主導して来たEUへの配慮から棄権とした様です。
もし、今回採択されれば、MARPOL条約ANNEX VIが改正され、2027年3月発効、2028年1月に適用が開始される予定でしたが、今後の見通しは不透明となり、この適用が少なくとも1年後ろ倒しされるとの見方もあります。
今回の採択を1年延長すると言う決定に対して、筆者として以下の点を懸念します。
- IMOは2023年7月のMEPC80にて新たなGHG削減戦略を採択し、2050年にGHGネット排出ゼロを目指すと決定しました。今回の1年延期に関わらず、これを目指すのであれば、目標年である2050年に近づく程、規制強化の度合いがきつくなる可能性となる事。それどことか下手をするとこの中期対策自体の達成が危うくなる危険さえ孕んでいると考えます。
- 米国の国際条約交渉過程における対応
米国は、今回の採択に賛成する国に対して以下の様な報復措置を検討するとの強硬な対応を取った様ですが、皆さんはどの様に思われるでしょうか?
米国の様な対応が取れる国が本気で条約に反対すれば国際条約の成立を阻止する事が出来る前例を作ってしまう事にならないのかが心配されます。
・乗組員ビザの発給制限
・賛成国船舶に対して入港料金の賦課 - 国際条約での対応が遅れると、従来の国際規則に満足しない国や地域が独自の規制(国際条約よりも厳しい内容)を制定し、Double Standardの規制となることから業界が混乱してしまう。
- GHG削減活動が停滞
新燃料への対応や、GHG排出削減対策に対する開発や投資が遅れ、結果して地球温暖化への歯止めが効かなくなり、地球に様々な悪影響を及ぼす。
世界の情勢が上記した様な状況ではありますが、海運業界にいる我々は、少なくとも地球温暖化を危惧する者として、条約の成立に係わらず、我々が出来る以下の様なGHG削減対策を粛々と行っていく事だと思っています。
・燃費削減(含む新しい燃費削減技術の導入への対応)
・新燃料使用に対する安全で効率的な運用方法の開発
頑張りましょう。未来の地球の為に!
以上